フェルナンド・カブサッキ、勝井祐二、七尾旅人

先日アルゼンチンを代表する音響派ギタリスト、フェルナンド・カブサッキのライブコンサートを見に新宿ピットインに行って来ました。

フェルナンド・カブサッキさんのことを知ったのはバイオリニストの勝井祐二さんのツイッターを通してでした。2011年の東日本大震災直後の4月の初の単独ジャパンツアー、当時の状況を考えると多くの来日予定のミュージシャンが来日を断念せざるえない中、カブサッキさんは日本にいらしたそうです。その頃はそんな人もいるんだなぐらいにしか考えていませんでした。その後もほぼ毎年地球の裏側から来日され様々なミュージシャンとセッションを重ねると同時にライブもされてきたそうです。今回のライブのことも勝井さんのツイッターで知りすぐにお店に予約の連絡をしました。先の予定を決めるのが苦手な自分にしては異例の行動力です。

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客席のライトが落とされそれまで流れていたエリックドルフィーの「at the Five Spot」の音も消えステージ上に3人が現れました。そして 勝井さんの「いろいろと決まっていないのですが3人で音を楽しんでいきたいと思います」の一言で演奏が始まりました。

カブサッキさんがギターを弾き始め、勝井さんのバイオリンと七尾さんのギターと声で旋律を重ねさらにカブサッキさんが呼応し、時に優しく寄り添ったり、時に激しくぶつかったりして3人の音の交流が続いていきました。見ているこちらは予測不能な展開にドキドキしたり、ふわふわした浮遊感ですっかり気持ちよくなったりと、いつが始まりとも終わりともわからない時間の中で音を感じ楽しんでいました。

途中今ツアー初のカブサッキさんのトークがあったり、勝井さんから3人の馴れ初めのお話やカブサッキさんのタンゴの演奏に合わせ七尾さんがちょっぴり踊ったりといった時間もありました。

そうして最後の曲まで始まりの合図も言葉もなく進んでいきましたが、最後の曲だけは違いました。七尾さんがどうしてもこの3人で「帰り道」という曲をやりたいと言ったのです。この歌は5年前の震災直後に作った歌でご本人曰く『混乱の中で不安を抱えたお客さんに求められたことを契機に作ったけど ごく個人的気持ち…家族や当時の仲間を少しでも和ませたいという思いがベースになっていたので 震災後 奈落を歩くようにそれを失ったあと歌えなくなっていた時期もあった』〜七尾旅人@tabito_net Twitterより抜粋

私は確か3,11の数日後に七尾さんがおそらく自分のスマートフォンの動画機能を使ってこの歌を弾き語った映像を見てとても強い印象受けたのを鮮明に覚えています。下に置いたスマートフォンに向かって少し虚ろ気な表情で語りかけるように歌っていたあの歌がまさか今日聴けるとは思いませんでした。そして奇しくも3日前に起こった九州における大震災の後に、、、

「帰り道」それはそれはとても美しかったですよ。

終演後は新宿3丁目の老舗のブルースバーで少しお酒をいただき地下鉄に乗り歩いて家に帰りました。

最後になりますが、この度の九州における大震災でお亡くなりになられた方、被災された方には心よりお見舞い申し上げます。1日も早く穏やかに過ごせる日がきますように。